費用・助成金

「外国人雇用で72万円」は本当か|今は最大25万円、もらえる条件と誤解を一次資料で解説

公開日 2026年11月4日更新日 2026年11月4日

外国人雇用の「72万円」、もらえる条件と誤解、2026年版と書かれた記事のカバー

「外国人を雇うと72万円もらえる」という話の出どころとして公的な資料で確かめられるのは、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」の以前の上限額です。これは、2025年3月31日までに計画を出した場合の「かかった経費の3分の2、上限72万円」という定めでした。2026年10月1日以降に計画を出す場合の支給額は、最大25万円です。採用した時点で出るものでも、毎月出るものでもありません。

この記事では、2026年11月4日時点の厚生労働省の資料をもとに、「72万円」の正体と、いま外国人を雇う企業が実際に受けられる額と条件を整理します。

「72万円」の出どころは、外国人向け助成金の以前の上限額

厚生労働省の「対象者別雇用関係助成金一覧」で、「外国人労働者」の欄に載っている助成金は、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)だけです(2026年11月4日時点)。外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を通じて、外国人労働者の職場定着を図る事業主への助成金です。

このコースの令和3年4月1日版・令和4年4月1日版・令和5年4月1日版のリーフレットには、支給額が次のように書かれています。厚生労働省のページで令和6年4月1日版の欄に載っているリーフレットも、令和5年4月1日版と同じものです。

条件 支給額
賃金要件を満たした場合 支給対象経費の2/3(上限額72万円)
賃金要件を満たしていない場合 支給対象経費の1/2(上限額57万円)

出典:厚生労働省のリーフレット(令和3年4月1日版〜令和5年4月1日版)、支給要領(令和6年4月1日現在)

どの版が使われるかは、就労環境整備計画を提出した日で決まります。厚生労働省のページでは、令和3年4月1日版は2021年4月1日〜2022年3月31日、令和6年4月1日版は2024年4月1日〜2025年3月31日に計画を出した事業主向けと案内されています。つまり、上限72万円の定めが使われたのは、2021年4月1日から2025年3月31日までに計画を出した場合です。

「72万円」の正体(令和6年4月1日現在の支給要領まで)
決め方かかった経費の3分の2外部に支払った経費に2/3を掛けた額。72万円は、その上限
対象の経費外部への支払いだけ通訳費、翻訳機器の導入費(上限10万円)、翻訳料、弁護士・社会保険労務士等への委託料、多言語の社内標識類の設置・改修費
賃金要件上乗せのための要件外国人労働者の毎月支払われる賃金を5%以上増やすと2/3。満たさないと1/2・上限57万円
単位事業主ごと事業主単位で支給し、事業所単位では支給しない

72万円を受け取るには108万円以上の経費が必要だった

令和6年4月1日現在の支給要領では、支給対象経費は、計画期間の初日から末日までに、事業主から外部機関等に支払いが完了した経費です。通訳費・翻訳料などのほか、翻訳機器の導入費は10万円が上限で、弁護士・社会保険労務士等への顧問料は含まれません。

支給額はこの経費の3分の2です。上限の72万円を受け取るには、72万円÷2/3=108万円以上の経費を支払っている必要があった計算になります。

賃金要件は、支給の要件ではなく加算の要件です。措置の対象となる外国人労働者の毎月支払われる賃金を、最も遅い措置の実施日の翌日から1年以内に、5%以上増やしている必要がありました。5%以上の増加は、外国人労働者ごとに改定後3か月と改定前3か月の賃金総額を比べ、全員について確かめる定めです。

いまは最大25万円:版ごとに決め方が変わってきた

このコースの支給額の決め方は、2025年4月と2026年10月に変わっています。

支給額の上限の比較(計画を出した日で使う版が決まる)
令和3年4月1日版〜令和6年4月1日版72万円2021年4月1日〜2025年3月31日に計画を出した場合。経費の2/3(賃金要件を満たした場合)
令和7年4月1日版・令和8年4月1日版80万円2025年4月1日〜2026年9月30日に計画を出した場合。1つの措置の導入ごとに20万円
令和8年10月1日版25万円2026年10月1日以降に計画を出す場合。①②で20万円、③を加えると25万円

出典は厚生労働省の各版のリーフレットと支給要領。上限額どおりに支給されるとは限らない。

2026年10月1日以降に計画を出す場合、次の措置を導入・実施し、受給要件をすべて満たすと20万円が支給されます。③の上乗せの措置も実施すると25万円です。

  • ① 雇用労務責任者(外国人社員の相談・管理の担当者)の選任
  • ② 就業規則・社内マニュアル等の多言語化
  • ③ 一時帰国のための休暇制度の整備(上乗せの措置)

あわせて、計画期間が終わってから6か月の外国人労働者の離職率が15%以下であることなども要件です。措置の中身や細かな要件は、外国人雇用の助成金は最大25万円で図解しています。

「毎月もらえる」「1人ごとにもらえる」わけではない

外国人労働者就労環境整備助成コースは、事業主単位(企業単位)で支給されます。事業所ごとに支給されるものではありません。2026年10月1日以降の支給額は、受給要件をすべて満たした場合の定額で、資料には外国人社員の人数に応じて増える定めはありません。

支給申請も1回です。計画期間が終わってから6か月の「離職率算定期間」を過ぎた後、2か月以内に申請します。厚生労働省のガイドブックには、次の例が載っています。

計画の提出から支給申請までの例(厚生労働省のガイドブック、令和8年10月1日現在)
  1. 2026年10月1日
    就労環境整備計画を提出計画期間の初日の6か月前の日から1か月前の日までに提出する
  2. 2026年12月1日〜2027年11月30日
    計画期間認定された計画に基づいて措置を導入・実施する
  3. 2027年12月1日〜2028年5月31日
    離職率算定期間(6か月)外国人労働者の離職率が15%以下かどうかを見る
  4. 2028年6月1日〜7月31日
    支給申請期間この期間を過ぎて申請すると支給されない

計画の提出から支給申請の期間まで、1年8か月ほどかかる例です。申請の後にも審査があります。

この助成金は予算の範囲内で支給され、厳正な審査があります。確認項目が多いため、支給の可否が決まるまでに時間がかかる場合があります。採用した月から毎月入ってくるお金として資金繰りに組み込むのは、制度の仕組みに合いません。

特定求職者雇用開発助成金は外国人の採用に使えるか

雇い入れに対して支給される代表的な助成金に、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)があります。高年齢者や障害者などの就職困難者を、ハローワーク等の紹介により、継続して雇用する労働者(雇用保険の一般被保険者)として雇い入れる事業主に助成されます。

対象は「外国人」ではなく就職困難者の区分

対象労働者は、高年齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母等などの区分で決まります。①の区分には、ほかに父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮帰国被害者等、アイヌの人々などが入ります。「外国人」という区分はありません。

外国籍の人に関係する区分としては、ウクライナ避難民(2022年5月30日から当分の間)と補完的保護対象者(2023年12月1日から当分の間)が加えられています。対象の区分は在留資格では決まっていないため、特定技能や技術・人文知識・国際業務の人を雇ったというだけでは、対象の区分に当たらないと考えられます。

支給額と分割支給の仕組み(2026年11月4日時点)

対象労働者 中小企業 中小企業以外
高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等、ウクライナ避難民、補完的保護対象者など 60万円(30万円×2期) 50万円(25万円×2期)
同じ区分の短時間労働者(週20時間以上30時間未満) 40万円(20万円×2期) 30万円(15万円×2期)
身体・知的障害者(重度障害者等を除く) 120万円(30万円×4期) 50万円(25万円×2期)
重度障害者等 240万円(40万円×6期) 100万円(33万円×3期、第3期は34万円)

出典:厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」のページ・パンフレット(R8.3.5版)

この助成金は、6か月ごとに区切った「支給対象期」ごとに、2〜6回に分けて支給されます。「2期」の場合は、採用から半年後と1年後の2回です。支給申請は、各支給対象期の末日の翌日から2か月以内に、期ごとに行います。対象労働者が支給対象期の途中に離職した場合、その期の分は原則として支給されません。各期の支給額は、その期に支払った賃金額が上限です。

求人サイト経由の採用は対象外

主な支給要件は次のとおりです。

  • ハローワーク、または本助成金の取扱いに同意する届出を出した民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
  • 雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが確実と認められること。継続して雇用するとは、65歳以上に達するまで雇用し、かつ雇用期間が継続して2年以上であることです
  • 有期雇用の場合は、本人が望む限り更新できる「自動更新」の契約であること

厚生労働省のパンフレットのQ&Aでは、求職者を直接募集した場合や求人サイトを利用した場合は助成対象にならないとされています。応募があった後に形式的な職業紹介で受け入れた場合も同じです。また、対象者であることを知らずに雇い入れ、後から分かった場合も助成対象になりません。2026年5月1日以降の紹介では、高年齢者(60歳以上)について、紹介日にハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることも要件に加わっています。

不正受給のリスク

どちらの助成金も、偽りその他不正な行為で受給したり受給しようとしたりすると、不支給または支給の取り消しになります。

  • 外国人労働者就労環境整備助成コース:すでに支給された助成金の全部または一部の返還が必要で、不正受給をした事業主名等は原則公表されます。支給申請書や添付書類の写し等は、支給決定日の翌日から5年間保管します
  • 特定求職者雇用開発助成金:すでに支給された助成金を全額返還し、取り消し等を受けた日以後5年間は各種助成金の支給を受けられません。特に悪質なものは原則公表となるほか、詐欺罪などで刑罰に処される場合があります

よくある誤解

外国人を1人雇うと、毎月6万円(年72万円)もらえるのですか。
いいえ。外国人労働者就労環境整備助成コースは企業単位で、支給申請は計画期間の後の離職率算定期間を過ぎてから1回です。72万円は以前の版の上限額で、2026年10月1日以降に計画を出す場合は最大25万円です。
コンビニなどの業種で外国人を雇うと、72万円の対象になりますか。
このコースの主な受給要件は、雇用保険の被保険者となる外国人労働者を雇用していること、措置の導入・実施、離職率などで、金額が業種で決まるものではありません。2026年10月1日以降に計画を出す場合は、どの企業も最大25万円です。
助成金で採用の費用以上の収入になりますか。
以前の72万円の定めは、外部に支払った経費の3分の2までで、支払った額を超えることはありませんでした。いまは定額の20万円か25万円で、措置にかかる手間や費用と比べて判断するものです。
2024年に72万円の版で計画を出しました。今から出しても72万円ですか。
どの版が使われるかは計画を提出した日で決まります。2026年10月1日以降に新しく計画を出す場合は、令和8年10月1日版(最大25万円)が使われます。過去の計画の扱いは、管轄の都道府県労働局に確かめてください。

自社で確かめること

「72万円」の話を聞いたときのチェックリスト
  • 話に出てくる助成金の正式な名前(コース名まで)を確かめた
  • その金額が、どの版の資料の、いつ計画を出した場合の額かを確かめた
  • 2026年10月1日以降に計画を出す場合、外国人労働者就労環境整備助成コースは最大25万円であることを前提にした
  • 雇用保険に入っている外国人社員がいる(特別永住者、在留資格「外交」「公用」の人を除く)
  • 計画の提出から支給申請まで1年以上かかる前提で、資金繰りを考えている
  • 特定求職者雇用開発助成金を考える場合、対象の区分に当たる人を、ハローワークなどの紹介で雇う予定がある
  • 申請に使う書類や記録を、実態どおりに作り、保存できる体制がある

自社が対象になるか、どの版の要件が使われるかなど、個別の判断が必要な点は、最寄りの都道府県労働局(職業安定部 職業対策課・助成金センター)やハローワーク、社会保険労務士などの専門家に確かめてください。

助成金に頼らず採用の費用を抑えるには

外国人を雇うときの助成金は、採用の費用を穴埋めするものではなく、定着の環境づくりや就職困難者の雇い入れを後押しするものです。採用そのものにかかる費用は、外国人採用の費用の内訳と見積もりの比べ方で整理しています。

Jobal(ジョバル)は、特定技能・技術・人文知識・国際業務(技人国)に特化した外国人材の求人メディアです。掲載料・初期費用は0円で、採用が決まったときにだけ成功報酬がかかります。在留資格の申請のサポートと入社後のフォローも無料です。外国人採用について、まずはお気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。

出典・参考

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